きょうの延髄反射

その積み重ねが時代を映すことになるのかもしれない

撮影禁止の街

新聞でこの本の広告をみたとき、

ぜひ読みたいと思いました。

ずっとあそこは

なんなのだろうと思っていたし、

しかも書いているのが女性というのが、

なおさら読みたくなった理由。

 

いっきに読みました

「さいごの色街、飛田」井上理津子 著

 

著者がその街を訪ねたきっかけも私と同じで、

いわゆる宴会の会場が

飛田の料理屋「鯛よし百番」であったこと。

その百番というのが、

昔の遊郭をそのままお店にしたところで、

その絢爛豪華というか、

おどろおどろしいというか

淫靡というのか、金や赤を使った

凝りに凝った装飾が施された

独特の意匠に度肝を抜かれました。

昔こういうところで、

あでやかな遊女たちとお大尽が

お遊びになったというわけね。

と、昔はそういうこともあったんだと

情緒豊かなところにも見えたのですが…

 

その百番から一歩出ると、

もっと度肝を抜かれる風景があるのです。

飛田という街、

そんなところがこの現代に存在するということが、

私には本当にショックでした。

同じような間口の家が何十軒と並び、

小さな三和土を上がったところには

一人づつ女性が座っていて、

そこを男たちが一軒一軒

のぞいてまわっているのです。

呆然と見ていたら、

いわゆる遣り手婆というのでしょうか。

入口に控えたオバサンに怒鳴られました。

 

これって昔は赤線といわれたような

ところなのではないでしょうか。

明らかに違法ですよね。

なのに屋号が書かれた灯りは統一され、

明らかに整備された街並み。

しかもそのエリアの入口には派出所すらあるんです。

 

この本の著者、井上さんも

まったく同じ疑問を抱くのです。

そして女ひとりで、この飛田の街に

体当たりで取材を決行する。

なんせ現代日本のアンタッチャブル

NO Pictureの町ですから。

取材対象の口は本当にかたく

道のりは大変に困難なものだったようです。

それだけに

10年越しのルポルタージュは圧巻でした。

外堀から埋めていこうと、

飛田のなかにある居酒屋さんや、

周辺の街の人々と少しづつ懇意になり、

飛田の歴史をひもといていく過程。

また、飛田に関連するのではないかと

あたりをつけたヤクザの事務所に

一人で取材に乗り込んだり、

友達に協力してもらい、

飛田の求人に応募して、面接に一緒に行ったり、

胆がすわってないとできない仕事です。

 

私が飛田からの帰りのタクシーの運転手さんに

本当に驚いたという話をしたら、

シャワーもないところだけど

20分1万円(その当時)で安いし

女の子は若くてかわいいと評判

という話をしてくれました。

 

明らかに売春目的なのに

飛田に150軒以上あるその類のお店は

警察に「料亭」として届けて出ており、

自治組織として協同組合もあるようです。

そこの事務所には

街の防犯に協力したなど

警察からのたくさんの感謝状が

飾られているとか。

 

防犯に協力ねえ…

 

そこの幹部の名札が掛けられた一角に

橋下事務所の名札があり、

にっこり笑った橋下徹さんと組合長が

握手している写真も飾られているのだとか

へえー、ですね(^^;)

 

明らかに犯罪なのに、

屁理屈でそうじゃないことになっている。

警察も市長も認めている。

 

清濁あわせ飲んでの世の中かなあ。